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キャンセル料について再び


皆様、こんにちは。

昨年の8月号にキャンセル料について旅館側からの意見を述べさせていただきました。
しかしながら、日本の旅館業界ではお客様から十分な理解を得られないのが実情です。
なぜなら日本はそういう文化だから、です。

つい先日もやむ無い事情で当日キャンセルをなさったお客様に対しキャンセル料を請求させていただきました。それに対し抗議のお手紙を頂戴いたしました。わかっていただきたいのは、キャンセルの理由を知る私としても苦渋の選択でまさに心を鬼にしての決断だということです。
ただ悲しいことに、その気持ちも宿としての立場も言葉を選び言い回しに工夫しても全くといっていいほどお客様には伝わりません。

そもそもどうして、「キャンセル料」は宿泊約款の中に定められてあるのか?
なぜなら、第一にご予約のお客様のお越しを準備を整えてお待ちしている多くのスタッフがあること。そしてそのスタッフにはもちろん家族があり養う子供があります。
第二に魚など食材の仕入れ・仕込みをしてしまっているため結局すべてが無駄になってしまうこと。皆様はおそらくご存じではないでしょうが、海の旅館というのは料理原価が恐ろしくかかります。海の幸を目的にいらっしゃっているお客様には素材のごまかしがきかないですし、この立地で比較的安価な野菜や山菜料理などを出すわけにはいきません。

私どもはサービス業です。数ある宿の中から私どもをお選びいただいた大切なお客様を心からお迎えし、お料理を用意し、温泉で日頃の疲れを癒していただき、お帰りの時間までのサービスに対するお代金をいただいて成り立っております。ですが、実際はチェックインなさる前からの準備がかなりあるわけです。それが「キャンセル料」が発生する理由です。

すこし前に「国家の品格(藤原正彦先生著)」を読みました。もう何ヶ月もベストセラーになっている書籍です。なるほどと納得できるわかり易い内容で短い時間で読むことができます。
その中で日本人特有の情緒について書いていらっしゃいます。それは「もののあわれ」といわれる日本人ならではの繊細な感受性を指します。たしか高校時代に古典の授業で習った「あわれなり」とは「しみじみとした趣があること」やずばり「趣を楽しむ感性」のことだったような記憶があります。(違うかもしれませんが・・)
確かに日本人ほど感情が豊かで複雑な国民性はありません。
で、その日本人の感受性を満足させる為に、和風旅館というものは古来からスタイルを幾重にも変えながらも根本は全く変わらないまま今に至ると思います。
同時に日本は“あいまいさ”を重んじる文化です。イエスノーをはっきり言うと煙たがられ、はっきりさせないことが美徳とされます。

旅館側が売る「サービス」というものはまさに“あいまいさ”が形になったものだと思います。ここまでがサービスですよという線引きが非常に難しいのです。
幾つかの例をあげますと、例えばお客様の中にお浴衣・バスタオル・タオルなど何度も取り替えなくては気が済まない方があったとします。お客様はそれを「サービス」の一つであると認識なさり、それに対してのお料金を請求させていただく事にご立腹なさいます。
また、よく「おなかが一杯だからご飯はいりません。その代わりそのご飯でおにぎりを作ってください」とご要望があります。もちろんその場合も有料だとサービスが行き届いてない旅館だと叱られます。
旅館の持ち物であるバスタオルや調度品などをお持ち帰りになるのも同様に旅館側が声を荒げることはできません。

どこまでのサービスに対してお料金をいただけるのか。
正直なところボーダーラインがありません。「お客様の良識」にゆだねるしかないのです。
極端ですがお客様が「これは白ですよね」とおっしゃればどう見ても黒だなと思っても「そうですね」と答えるのが日本の文化だからです。

だからこそ接客業の難しさ、そしていろいろ辛い経験をするたび人生の無常さを身をもって感じます。
たくさんの様々な辛いことを抱えながら、しかしヒトはそれでも人生を歩いていくのですね。でもその分量と同じくらい楽しいこともたくさん。
私はまだまだ若輩者ながら、勇気を出してNOと言える旅館にしていくのも大事なのではないかなという思いも強くしております。本当はYESばかり答えてお客様に喜んでいただくのが理想的なのですが・・。


| hiina | 16:19 | comments (x) | trackback (x) | マジメな旅館のお話 |
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